
Predictive Maintenance / PdM / Condition-Based Predictive Maintenance
予兆保全(予知保全)
予兆保全(予知保全)とは、設備や機械の振動、温度、電流、圧力、音、稼働履歴、センサデータなどを監視し、故障や性能低下の前兆を捉えて、適切なタイミングで保全を行う考え方のことです。
定期的に決められた周期 で部品交換する予防保全に対し、予兆保全は「今その設備がどのような状態か」を見ながら保全タイミングを判断します。つまり、まだ使える部品を早く交換しすぎる無駄を減らしつつ、壊れる直前まで放置するリスクも抑える考え方です。
つまり予兆保全(予知保全)とは、設備状態の変化をデータで捉え、故障前に必要な保全を行うための状態監視型保全手法です。
ロボット、自動化設備、モーター、減速機、コンプレッサ、搬送装置、工作機械など、停止影響の大きい設備で注目されています。
■予兆保全の役割
予兆保全の主な役割は、設備異常の前兆を見つけ、最適なタイミングでメンテナンス を実施することです。主に次のような目的で使われます。
・故障前兆の早期検知
・突発停止の回避
・過剰保全の削減
・設備寿命の有効活用
・保守タイミングの最適化
・計画停止への切り替え
・品質低下の兆候把握
・保守コストの最適化
◆つまり、予兆保全は壊れる前に、必要なときだけ適切に保全するための考え方です。
■なぜ重要なのか
設備保全では、「壊れてから直す」と停止リスクが大きく、「決まった周期で交換する」とまだ使える部品まで交換する無駄が出ることがあります。予兆保全は、この両者の中間を狙い、設備状態を見ながら最適なタイミングで対処することを目指します。
予兆保全が重要な理由は次の通りです。
・突発故障を減らしやすいため
・保全の無駄を減らしやすいため
・設備停止を計画化しやすいため
・重要設備の信頼性を高めやすいため
・データに基づいた保全判断がしやすいため
・自動化設備の安定運転に役立つため
◆特に、1台停止すると生産影響が大きい設備で大きな効果が出やすいです。
■主な監視対象
予兆保全では、次のような設備や部品が主な対象になります。
・モーター
・減速機
・軸受(ベアリング)
・コンプレッサ
・ポンプ
・搬送コンベア
・ロボット関節部
・工作機械主軸
・ファン
・油圧、空圧ユニット
◆つまり、回転体、摺動部、負荷変動がある装置が特に対象になりやすいです。
■主な監視項目
予兆保全では、一般的に次のような項目を監視します。
1. 振動
ベアリング摩耗、芯ずれ、アンバランス、緩みなどの兆候を捉えやすい代表的な指標です。
2. 温度
異常摩擦、電気負荷増大、冷却不良などを把握するのに役立ちます。
3. 電流、消費電力
モーター負荷増大や動作異常の兆候が出ることがあります。
4. 圧力、流量
空圧、油圧、ポンプ、配管系の詰まりや劣化を確認しやすい項目です。
5. 音、異音
通常と異なる音の変化は、故障の初期兆候になることがあります。
6. 稼働時間、サイクル数
純粋な状態監視だけでなく、使用量管理も予兆把握の材料になります。
■予防保全との違い
予防保全は、あらかじめ決めた周期で点検や部品交換を行う保全です。一方、予兆保全は、設備の実際の状態を見ながら保全時期を判断する保全です。
つまり、
・予防保全=時間や周期ベース
・予兆保全=状態やデータベース
という違いがあります。
■事後保全との違い
事後保全は、故障してから修理する考え方です。一方、予兆保全は、故障前の兆候を捉えて先に対処する考え方です。
つまり、
・事後保全=壊れてから対応
・予兆保全=壊れる前に兆候を見て対応
という違いがあります 。
■主な実施方法
予兆保全は、一般的に次のような方法で行われます。
1. センサ設置による常時監視
振動センサ、温度センサ、電流監視などを取り付け、常時データを取得する方法です。
2. 定期測定
ハンディ振動計や温度計などを用いて、決まったタイミングで測定する方法です。
3. ログ解析
PLC、サーボ、インバータ、ロボットコントローラが持つ内部ログや異常履歴を解析する方法です。
4. AI、統計解析活用
蓄積した運転データから異常傾向を学習し、劣化兆候を検出する方法です。
■実務で重要なポイント
予兆保全を実際に機能させるには、次の点が重要です。
1. 対象設備の選定
最も重要なのは、すべての設備へ一律に適用しないことです。停止影響が大きい設備、故障頻度が高い設備、保守費が高い設備から優先的に始めることが重要です。
2. 正常状態の把握
異常を検知するには、まず正常時の基準データが必要です。正常値を取らずに監視しても、変化を評価しにくくなります。
3. 異常しきい値の設定
どこからが異常兆候なのかを決める必要があります。厳しすぎると誤警報が増え、甘すぎると異常を見逃します。
4. データの見方
データを取 るだけでは意味がなく、変化傾向を見ることが重要です。1回だけの値ではなく、増加傾向や周期変化を見る必要があります。
5. 保全アクションとの接続
異常兆候を検知したあと、誰が、いつ、どう対応するかを決めておかなければ、予兆保全は実際の保全効果につながりません。
6. 現場知見との組み合わせ
データだけでなく、現場作業者の「音が違う」「動きが重い」などの感覚情報も重要です。データと現場感覚を組み合わせることで精度が高まります。
■よくある課題
予兆保全では、次のような課題が起こりやすいです。
・センサを付けただけで終わる
・正常値の基準がない
・しきい値設定が難しい
・データはあるが分析できない
・異常通知が多すぎて現場が慣れてしまう
・本当に故障につながる兆候か判断しにくい
・対象設備を広げすぎて管理できない
・保全アクションへつながらない
◆このため、予兆保全は単なる監視システムではなく、データ取得、分析、判断、保全実行まで含めた仕組みとして構築する必要があります。
■自動化との相性
予兆保全は、自動化設備との相性が非常に良い考え方です。自動化設備は停止時の影響が大きく、センサデータも取得しやすいため、予兆保全を導入しやすい環境があります。
主なメリットは次の通りです。
・突発停止を減らしやすい
・無人運転の信頼性を高めやすい
・保全タイミングを最適化しやすい
・重要設備の故障リスクを下げやすい
・設備データ活用を進めやすい
・スマートファクトリー化と相性が良い
◆一方で、導入効果を出すには対象絞り込みと運用設計が重要です。
■実務でのチェックポイント
・どの設備へ適用するか明確か
・正常時データを取れているか
・監視項目は適切か
・異常しきい値は妥当か
・通知後の対応ルールがあるか
・データを継続的に見直しているか
・現場の感覚情報も取り込めているか
・予防保全や定期点検と役割分担できているか
■関連用語
・予防保全(PM)
・定期点検
・日常点検
・トラブルシューティング
・設備診断
・振動監視
・温度監視
・スマートファクトリー
■まとめ
予兆保全(予知保全)とは、設備の振動、温度、電流、圧力などの状態データを監視し、故障や性能低下の前兆を捉えて、最適なタイミングで保全を行う考え方です。自動化設備では、突発停止防止、保全最適化、安定稼働のために非常に有効です。
実務では、対象設備の選定、正常値の把握、しきい値設定、通知後の対応ルールまで含めて仕組み化することが重要です。適切に運用できれば、保全効率と設備信頼性を大きく高めることができます。
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