
ISO/TS 15066 Collaborative Robot Technical Specification
ISO/TS15066
ISO/TS 15066とは、協働ロボット(コボット)と人が同じ作業空間で安全に作業するための安全要求事項や技術的指針を定めた国際技術仕様書(Technical Specification)です。2016年に国際標準化機構(ISO)から発行され、ISO 10218-1およびISO 10218-2を補完する規格として位置付けられています。
従来の産業用ロボットは、安全柵やフェンスで人とロボットを完全に分離して運用することが一般的でした。しかし、協働ロボットは人と同じ空間で作業するため、新たな安全基準が必要となり、その指針としてISO/TS 15066が策定されました。
ISO/TS 15066では、リスクアセスメントを前提としたうえで、人とロボットが安全に協働するための設計・運用方法を示しています。特に、人体へ加わる**接触力(Force)や接触圧力(Pressure)**の許容値を具体的に示している点が大きな特徴です。
また、協働運転(Collaborative Operation)の方式として、次の4つの代表的な安全機能を定義しています。
・安全監視停止(Safety-Rated Monitored Stop:SRMS)
・ハンドガイド(Hand Guiding)
・速度および間隔の監視(Speed and Separation Monitoring:SSM)
・出力・力の制限(Power and Force Limiting:PFL)
これらの安全機能を単独または組み合わせて使用し、リスクアセスメントの結果に基づいて適切な安全対策を講じます。
例えば、
・マシンテンディング
・組立作業
・ピックアンドプレース
・検査工程
・パレタイジング
・ネジ締め
・接着剤塗布
など、人とロボットが近接して作業する工程で広く活用されています。
◆つまりISO/TS 15066とは、協働ロボットを安全に設計・導入・運用するための国際的な技術指針です。
■ISO/TS 15066の役割
ISO/TS 15066の主な役割は、人と協働ロボットが同じ空間で安全に作業できる環境を構築することです。
主な役割は次のとおりです。
・協働ロボットの安全設計
・リスクアセスメントの指針
・接触力・圧力の評価
・安全機能の定義
・労働災害防止
・国際基準への適合
・安全な設備導入
・安全文化の向上
◆つまりISO/TS 15066は、協働ロボットの安全性を確保するための技術的な基準です。
■なぜ重要なのか
ISO/TS 15066を考慮せずに協働ロボットを導入すると、
・人との接触によるけがが発生する
・安全機能が不足する
・リスク評価が不十分になる
・安全基準を満たせない
といった問題が発生する可能性があります。
一方、ISO/TS 15066に基づいて設計・運用することで、
・人とロボットが安全に協働できる
・労働災害を防止できる
・設備導入時の安全性を向上できる
・国際的な安全基準へ対応できる
・安全設計を標準化できる
など、多くのメリットがあります。
◆そのためISO/TS 15066は、協働ロボットを導入する際に欠かせない技術指針となっています。
■基本的な考え方
ISO/TS 15066では、一般的に次の流れで安全設計を行います。
1. リスクアセスメントを実施する
協働作業に潜む危険源を特定し、リスクを評価します。
2. 協働方式を選定する
4つの協働運転方式から適切な方式を選びます。
3. 安全機能を構築する
安全PLC、安全センサー、安全停止機能など を設計します。
4. 検証・妥当性確認を行う
接触力や停止距離、安全機能が要求どおりであることを確認します。
◆つまりISO/TS 15066は、評価・設計・検証・運用を体系的に実施するための技術指針です。
■ISO 10218との違い
混同されやすい規格としてISO 10218があります。
△ISO/TS 15066
協働ロボットによる人との協働作業に特化した技術仕様です。
△ISO 10218
産業用ロボットおよびロボットシステム全体の安全要求事項を定めた国際規格です。
つまり、
・ISO/TS 15066=協働ロボット専用の技術指針
・ISO 10218=産業用ロボット全般の安全規格
という違いがあります。
■ISO 12100との違い
もう一つ混同されやすいのがISO 12100です。
△ISO/TS 15066
協働ロボット特有の安全要求事項を定めています。
△ISO 12100
あらゆる機械に共通するリスクアセスメントや安全設計の基本原則を定めています。
つまり、
・ISO/TS 15066=協働ロボットの安全指針
・ISO 12100=機械安全全般の基本規格
という違いがあります。
■製造業での活用
ISO/TS 15066は、次のような工程で活用されています。
1. マシンテンディング
人とロボットが同じエリアで材料供給や取り出しを行います。
2. 組立工程
作業者とロボットが役割分担して組立を行います。
3. ピックアンドプレース
部品搬送を協働で実施します。
4. 検査工程
ロボットが部品を保持し、人が検査します。
5. ネジ締め・塗布工程
人が位置決めし、ロボットが加工を担当します。
◆つまりISO/TS 15066は、人とロボットが同じ空間で作業する工程に適用されます。
■主なメリット
ISO/TS 15066に基づいて設備を構築することで、一般的に次のようなメリットがあります。
1. 人とロボットが安全に協働できる
接触リスクを適切に管理できます。
2. 労働災害を防止できる
危険を体系的に低減できます。
3. 国際基準へ対応できる
海外案件や輸出設備にも対応しやすくなります。
4. レイアウトの自由度が向上する
安全柵を最小限にできる場合があります。
5. 生産性を向上できる
人とロボットが役割分担しながら効率よく作業できます。
■注意点
一方で、ISO/TS 15066を適用する際には注意点もあります。
1. 「協働ロボットだから安全」と考えない
最も重要なのは、協働ロボットであっても必ずリスクアセスメントを実施することです。ロボットの種類だけで安全性が保証されるわけではなく、ワークの形状やエンドエフェクタ、周辺設備、作業内容まで含めて評価する必要があります。
2. ワークやツールも評価する
鋭利な工具や重量物を扱う場合は危険性が高まります。
3. 接触力・圧力を確認する
規定値を超えないよう測定・評価します。
4. 安全機能を定期点検する
安全停止やセンサーの動作確認を継続します。
5. 作業者教育を行う
安全な運用方法を十分に周知します。
■実務で重要なポイント
ISO/TS 15066を適切に運用するには、次の点が重要です。
1. リスクアセスメントを最優先する
最も重要なのは、設備全体を対象として危険源を洗い出し、安全対策を決定することです。
2. ISO 10218と組み合わせる
ISO/TS 15066はISO 10218を補完する規格であり、単独ではなく両方を参照して設計します。
3. 適切な協働方式を選択する
4つの協働運転方式から用途に合った方式を採用します。
4. 実測による検証を行う
停止時間や接触力、停止距離などを測定・評価します。
5. 定期点検・教育を継続する
設備導入後も安全活動を継続します。
6. 文書化する
リスクアセスメント結果や検証データを記録・保管します。
■よくある適用例
ISO/TS 15066は、次のような協働ロボットシステムで活用されています。
・マシンテンディング
・ピックアンドプレース
・組立工程
・ネジ締め工程
・検査工程
・接着剤塗布
・パレタイジング
・品質検査
◆このためISO/TS 15066は、
人と協働ロボットが安全に作業するための中心的な技術指針となっています。
■自動化との 相性
ISO/TS 15066は、自動化設備との相性が非常に良く、協働ロボット、安全PLC、安全センサー、レーザースキャナー、AIカメラ、IoTなどと組み合わせることで、安全性と生産性を両立した協働システムを構築できます。
主なメリットは次のとおりです。
・安全な協働作業を実現できる
・リスクを低減できる
・レイアウトの自由度を高められる
・生産性を向上できる
・国際基準へ対応できる
・スマートファクトリー化を推進できる
■まとめ
ISO/TS 15066とは、協働ロボットと人が同じ作業空間で安全に作業するための技術的指針です。ISO 10218を補完する位置付けにあり、リスクアセスメントを前提として、協働運転方式や接触力・圧力の評価方法、安全機能などを規定しています。
実務では、協働ロボットだから安全と考えるのではなく、ワークやエンドエフェクタ、周辺設備を含めたシステム全体のリスクアセスメントを実施することが重要です。ISO 10218やISO 12100と組み合わせて適用し、安全機能の検証や定期点検、作業者教育を継続することで、安全で効率的な協働ロボットシステムを実現できます。






