
Direct Teaching
ダイレクトティーチングとは?
ダイレクトティーチングとは、ロボットアームを人が直接手で持って動かし、その位置や姿勢を教示する方法のことです。協働ロボットや一部の産業用ロボットで使われる代表的なティーチング方式の一つで、直感的に教示しやすい点が大きな特徴です。
従来のロボット教示では、ティーチペンダントのボタン操作や座標入力で少しずつ軸を動かし、教示点を登録する方法が一般的でした。一方、ダイレクトティーチングでは、ロボットを手で誘導しながら、「ここで止める」「この姿勢で作業する」といった形で位置を決められるため、現場感覚に近い形で教示を行えます。
特に、協働ロボットでは安全制御やトルクセンサ、軽量設計などを活かして、人がロボットを直接動かせるようにしている機種が多くあります。このため、初めてロボットを扱う現場でも比較的理解しやすい教示方法として広く注目されています。
つまりダイレクトティーチングとは、ロボットを手で直接動かして、作業位置や姿勢を教える直感的な教示方法です。
■ダイレクトティーチングの役割
ダイレクトティーチングの主な役割は、ロボットへ作業位置や動作経路を分かりやすく教えることです。
主に次のような目的で使われます。
・教示作業の簡略化
・現場での立上げ時間短縮
・初心者でも扱いやすい教示
・複雑な軌道の直感的入力
・段取り替え時間の短縮
・多品種少量生産への対応
・試作や改善時の素早い動作確認
・現場主導の自動化支援
◆つまり、ダイレクトティーチングはロボット教示のハードルを下げ、現場で使いやすくするための機能です。
■なぜ重要なのか
ロボット導入で大きな壁になりやすいのが、「教示が難しい」という点です。特に、中小製造業や多品種少量生産の現場では、専任プログラマが常にいるとは限らず、現場作業者が教示を行うケースも少なくありません。
ダイレクトティーチングが使えると、細かな座標操作を覚えなくても、実際の作業イメージに近い形でロボットへ動きを教えやすくなります。
ダイレクトティーチングが重要な理由は次の通りです。
・教示作業を分かりやすくしやすいため
・立上げ工数を減らしやすいため
・現場での改善対応を早めやすいため
・ロボット導入ハードルを下げやすいため
・段取り替えを柔軟にしやすいため
・多品種対応との相性が良いため
◆特に、協働ロボットを使った現場改善型の自動化で重要度が高くなります。
■主な使い方
ダイレクトティーチングは、一般的に次のような流れで使われます。
1. 教示モードへ切り替える
ロボットを通常運転ではなく、教示可能な状態へ切り替えます。
2. 安全条件を確認する
速度制限、イネーブルスイッチ、周囲安全確認などを行います。
3. ロボットを手で誘導する
アーム先端や指定部位を持ち、目的位置、姿勢まで動かします。
4. ポイントを記録する
到達した位置を教示点として登録します。
5. 必要な点を繰り返し登録する
開始位置、作業位置、退避位置など、必要なポイントを順番に教えます。
6. 動作確認する
登録したポイント間を実際に動かして、問題がないか確認します。
■主な活用場面
ダイレクトティーチングは、次のような場面でよく使われます。
・ピック&プレース
・ワーク搬送
・簡易組立
・マシンテンディング
・塗布や接着の位置教示
・検査ポイント教示
・パレタイジング位置調整
・試作や段取り替え時の位置変更
◆つまり、位置や姿勢を現場感覚で教えたい工程と相性が良いです。
■ティーチペンダント教示との違い
ティーチペンダント教示は、ボタン操作や座標入力によってロボットを動かし、位置を記録する方法です。
一方、ダイレクトティーチングは、人がロボットを直接手で動かして位置を教える方法です。
つまり、
・ティーチペンダント教示=操作画面やボタン中心
・ダイレクトティーチング=手で動かして教える
という違いがあります。
◆直感性ではダイレクトティーチングに利点がありますが、細かな数値設定や複雑な条件分岐はペンダント操作のほうが向く場合もあります。
■マスタリングや原点復帰との違い
ダイレクトティーチングは、位置を教える方法です。
一方、マスタリングは軸の基準位置を正しく合わせる作業、原点復帰は現在位置を基準位置へ戻して認識し直す処理です。
つまり、
・ダイレクトティーチング=動作位置を教える
・マスタリング=基準を合わせる
・原点復帰=基準へ戻す
という違いがあります。
◆これらは役割が異なるため、混同しないことが重要です。
■主なメリット
ダイレクトティーチングには、一般的に次のようなメリットがあります。
1. 直感的に教示しやすい
実際にロボットを持って動か せるため、初心者でも理解しやすいです。
2. 教示時間を短縮しやすい
複数軸を同時に自然な姿勢で動かせるため、ポイント設定が速くなることがあります。
3. 複雑な姿勢を作りやすい
多関節ロボットの先端姿勢を、画面操作より感覚的に合わせやすいです。
4. 現場改善と相性が良い
ワーク位置変更や治具変更に合わせて、その場で調整しやすいです。
■主な注意点
ダイレクトティーチングは便利ですが、使い方を誤ると問題が起こることがあります。
1. 安全確認が必要
最も重要なのは、安全機能が有効であること、周囲に干渉物や人がいないことを確認することです。
2. 正確な点確認が必要
手で動かせるぶん、感覚的に合わせすぎると、微妙なズレを見逃すことがあります。必要に応じて数値確認や試運転確認が必要です。
3. 重量物や大型ロボットでは不向きな場合がある
すべてのロボットで簡単に手で動かせるわけではありません。機種によって向き不向きがあります。
4. 最終的なプログラム調整は別途必要なことがある
位置を教えるのは簡単でも、速度、待機条件、入出力、分岐処理などは別途設定が必要です。
5. 動作経路の安全確認が必要
教示点だけでなく、その点と点の間をどう通るかも確認しないと、途中干渉の原因になります。
■実務で重要なポイント
ダイレクトティーチングを現場で有効に使うには、次の点が重要です。
1. 教示しやすさと再現性を両立する
最も重要なのは、教えやすいだけでなく、教えた位置が安定して再現されることです。
2. 安全モードを必ず使う
速度制限、イネーブル、協働モードなど、教示中の安全条件を明確にして使う必要があります。
3. 教示後の試運転確認を行う
手で合わせた位置でも、自動運転時にはワーク条件や速度が変わるため 、必ず確認運転が必要です。
4. ワークや治具のばらつきを考慮する
1点だけ合っていても、ワークばらつきや供給誤差で不安定になる場合があります。周辺条件も見て調整することが重要です。
5. 点だけでなく経路も見る
開始点と終了点だけでなく、その途中のアーム姿勢や干渉も確認する必要があります。
6. 変更履歴を残す
誰が、いつ、どの点を変更したかを記録すると、トラブル時の切り分けや再現性確認に役立ちます。
■よくある課題
ダイレクトティーチングの運用では、次のような課題が起こりやすいです。
・位置は合わせやすいが再現性が悪い
・教示点は合っていても経路干渉する
・安全確認不足で教示中に危険がある
・初心者が使いやすい反面、細かい精度詰めが甘くなる
・変更履歴が残らない
・最終的なI/O設定や条件分岐が不足する
・ワークばらつきに対応できていない
・教示後の試 運転が不十分
◆このため、ダイレクトティーチングは単なる便利機能ではなく、安全確認、再現性確認、経路確認とセットで使うべき教示手法です。
■自動化との相性
ダイレクトティーチングは、自動化との相性が非常に良い機能です。特に、協働ロボットを使った小規模自動化、現場改善型自動化、多品種対応との相性が良いです。
主なメリットは次の通りです。
・現場で教示しやすい
・立上げ工数を減らしやすい
・段取り替え対応をしやすい
・ロボット導入の心理的ハードルを下げやすい
・試作や改善サイクルを早めやすい
・現場主導での自動化を進めやすい
◆一方で、複雑な条件制御や高精度補正は別の設定作業と組み合わせることが重要です。
■実務でのチェックポイント
・教示中の安全条件は整っているか
・教示点だけでなく経路も確認しているか
・教示後に自動運転で試運転しているか
・ワークばらつきや治具誤差を考慮しているか
・必要なI/O条件や待機条件も設定しているか
・位置変更履歴を残しているか
・初心者でも使える手順にしているか
・精度が必要な箇所は数値確認しているか
■関連用語
・ティーチング・ティーチペンダント・協働ロボット(コボット)・原点復帰・マスタリング・キャリブレーション・エンドエフェクタ・安全機能
■まとめ
ダイレクトティーチングとは、ロボットを人が直接手で動かして、作業位置や姿勢を教える教示方法です。直感的で分かりやすく、立上げや段取り替えをしやすい点が大きな魅力で、特に協働ロボットで広く使われています。
実務では、安全条件の確保、教示後の試運転、経路確認、再現性確認まで含めて運用することが重要です。適切に活用できれば、ロボット導入のハードルを下げ、現場主導の柔軟な自動化を進めやすくなります。
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