
Thermography Inspection / Thermographic Diagnosis
サーモグラフィ診断
サーモグラフィ診断とは、設備、制御盤、モーター、ベアリング、配線、端子、ヒーター、ロボット、搬送装置などの表面温度を赤外線カメラで可視化し、通常とは異なる発熱や温度分布の偏りを見つけて、異常や劣化の兆候を把握する診断手法のことです。
通常の温度計では一点の温度しか分かりませんが、サーモグラフィでは設備全体の温度分布を画像として確認できます。そのため、端子の一部だけ熱い、ベアリングの片側だけ温度が高い、盤内の特定機器だけ発熱している、といった局所的な異常を見つけやすいのが大きな特長です。
つまり
※サーモグラフィ診断とは、設備の熱の偏りや異常発熱を見える化し、故障や劣化の前兆を早期に見つけるための非接触診断手法です。
製造設備、自動化ライン、電気保全、予防保全、予兆保全の分野で広く使われています。
■サーモグラフィ診断の役割
サーモグラフィ診断の主な役割は、異常発熱や温度分布の違和感を早期に発見し、重大故障や停止を未然に防ぐことです。
主に次のような目的で使われます。
・異常発熱の早期発見
・局所発熱の可視化
・接触不良や過負荷の発見
・冷却不足の把握
・機械抵抗増加の兆候把握
・予防保全、予兆保全の支援
・突発停止の予防
・保全優先順位の判断
◆つまり、サーモ グラフィ診断は熱の異常を見える化して、保全判断をしやすくする診断手法です。
■なぜ重要なのか
設備異常の多くは、最終的に熱として現れることがあります。
たとえば、端子の緩みは接触抵抗増加による発熱、ベアリングの潤滑不良は摩擦熱、モーターの過負荷は巻線温度上昇、通風不良は盤内温度上昇として表れます。これらを放置すると、焼損、故障、誤動作、火災、設備停止につながることがあります。
サーモグラフィ診断が重要な理由は次の通りです。
・異常発熱を視覚的に把握しやすいため
・局所的な異常を見つけやすいため
・非接触で安全に確認しやすいため
・停止前の前兆をつかみやすいため
・保全対象の優先順位を決めやすいため
・設備信頼性向上につながりやすいため
◆特に、電装機器、回転体、発熱部を持つ設備で重要度が高くなります。
■主な対象
サーモグラフィ診断の対象 には、次のようなものがあります。
・制御盤内の端子、ブレーカ、電源装置
・モーター・ベアリング・減速機
・サーボアンプ、インバータ・ヒーター、加熱装置・ロボット関節部
・コンベア駆動部
・ポンプ、ファン、コンプレッサ
・配線接続部、コネクタ部
◆つまり、発熱が異常の手がかりになりやすい電気部品や機械要素全般が対象になります。
■主な発見できる異常
サーモグラフィ診断では、一般的に次のような異常を見つけやすくなります。
1. 接触不良
端子やコネクタの緩み、腐食で接触抵抗が増えると局所的に発熱します。
2. 過負荷
モーター、電源、インバータなどが過負荷状態だと、全体的または一部が高温になります。
3. 潤滑不良
ベアリングや摺動部で摩擦が増えると、周辺温度が上がります。
4. 冷却不足
ファン停止、フィルタ詰まり、通風孔目詰まりなどで、盤内や機器全体が熱を持ちやすくなります。
5. 絶縁劣化や内部劣化
電装品内部の異常で、特定箇所だけ発熱する場合があります。
6. 負荷偏り
左右比較や相比較で、一部だけ温度が高い場合は異常の可能性があります。
■主な特徴
サーモグラフィ診断には、次のような特長があります。
1. 非接触で測れる
直接触れずに温度を確認できるため、安全性が高いです。
2. 面で見られる
一点温度ではなく、温度分布全体を画像で把握できます。
3. 局所異常に強い
一部だけ熱いといった偏りを見つけやすいです。
4. 比較しやすい
左右比較、同型設備比較、過去比較がしやすくなります。
■接触式温度計との違い
接触式温度計は、対象へ直接触れて温度を測る方法です。
一方、サーモグラフィ診断は、赤外線で表面温度分布を画像として確認する方法です。
つまり、
・接触式温度計=一点の温度確認
・サーモグラ フィ=面の温度分布確認
という違いがあります。
◆実務では、サーモグラフィで異常箇所を絞り、その後に接触式温度計で詳細確認することもあります。
■異常発熱検知との関係
異常発熱検知は、設備温度の異常を見つける考え方全般を指します。
サーモグラフィ診断は、その中でも熱画像を用いて異常発熱を見える化する具体的な方法です。
つまり、
・異常発熱検知=考え方、監視の目的
・サーモグラフィ診断=その具体的な実施手段
という関係です。
■実務で重要なポイント
サーモグラフィ診断を有効に使うには、次の点が重要です。
1. 正常時の状態を知る
最も重要なのは、正常時の熱画像を持っておくことです。比較対象があると、異常を見つけやすくなります。
2. 絶対温度だけでなく比較で見る
周囲温度や負荷条件で温度は変わるため、「何度か」だけでなく、左右差、相間差、同型設備との差を見ることが重要です。
3. 負荷条件をそろえる
無負荷時と高負荷時では温度の意味が違います。可能なら同じ運転条件で比較することが重要です。
4. 表面温度であることを理解する
サーモグラフィで見えるのは表面温度です。内部温度そのものではないため、内部異常を推定するには他情報も必要です。
5. 放射率の影響を考慮する
金属光沢面などは見かけ温度がずれることがあります。材質や表面状態によって見え方が変わる点に注意が必要です。
6. 危険個所を無理に撮影しない
非接触とはいえ、活線部や可動部の近くで無理に測ると危険です。安全確保を最優先にする必要があります。
7. 記録を残す
熱画像、撮影条件、周囲温度、負荷条件を残しておくと、傾向管理や再診断に役立ちます。
■よくある課題
サーモグラフィ診断では、次のような課題が起こりやすいです。
・正常時の比較画像がない
・負荷条件が違って比較しにくい
・放射率の影響を見落とす
・表面温度だけで内部異常を断定してしまう
・周囲温度の影響を考慮していない
・熱画像はあるが原因分析が不十分
・一時的な発熱を記録できていない
・診断結果を保全へつなげていない
◆このため、サーモグラフィ診断は単なる撮影作業ではなく、比較、条件整理、原因分析、保全計画まで含めた診断活動として進めることが重要です。
■予兆保全との関係
サーモグラフィ診断は、予兆保全(予知保全)の代表的な実施方法です。
温度分布の変化は故障前兆として分かりやすく、非接触で広く見られるため、保全現場で使いやすい手法です。
つまり、
・予兆保全=故障前兆を捉えて保全する考え方
・サーモグラフィ診断=その具体的な実施手法
という関係になります。
■自動化との相性
サーモグラフィ診断は、自動化設備との相性が非常に良い手法です。
自動化設備は電装密度が高く、熱異常が停止や故障へ直結しやすいためです。
主なメリットは次の通りです。
・異常発熱を見つけやすい
・非接触で広範囲を確認しやすい
・電装異常や機械抵抗増加を把握しやすい
・突発停止を減らしやすい
・予兆保全を進めやすい
・保全優先順位を決めやすい
◆一方で、熱画像だけでは原因を断定できないため、電流値、振動、音、ログ情報などと組み合わせることが重要です。
■実務でのチェックポイント
・正常時の熱画像を持っているか
・同じ負荷条件で比較しているか
・左右差、相間差、同型設備差を見ているか
・放射率や表面状態の影響を考慮しているか
・熱画像だけで断定せず他情報と照合しているか
・異常検知後の対応ルールがあるか
・記録を残して傾向管理しているか
・予兆保全へつなげているか
■関連用語
・異常発熱検
・異音
・異常振動検知
・予兆保全(予知保全)
・予防保全(PM)
・セルフダイアグノシス(自己診断)
・エラーログ分析
・ファンフィルタ清掃
・コネクタ緩み点検
■まとめ
サーモグラフィ診断とは、赤外線カメラで設備の表面温度分布を可視化し、異常発熱や温度の偏りから故障や劣化の兆候を見つける診断手法です。電装異常、接触不良、潤滑不良、冷却不足などの発見に有効で、予兆保全の代表的な方法の一つです。
実務では、正常時比較、負荷条件整理、放射率への配慮、他データとの照合、記録管理まで含めて運用することが重要です。適切に活用できれば、設備信頼性、保全効率、安全性を大きく向上させることができます。
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