
ISO 10218 / JIS B 8433
ISO 10218(JIS B8433)
ISO 10218(JIS B 8433)とは、産業用ロボットおよびロボットシステムの安全要求事項を定めた国際規格です。国際標準化機構(ISO)が策定したISO 10218を基に、日本工業規格(JIS)として制定されたものがJIS B 8433です。
この規格は、産業用ロボットの設計者、システムインテグレーター(SIer)、設備メーカー、ユーザーが、安全なロボットシステムを構築・運用するための基本指針となっています。
ISO 10218は大きく次の2つで構成されています。
・ISO 10218-1:産業用ロボット本体の安全要求事項
・ISO 10218-2:ロボットシステムおよびシステムインテグレーションの安全要求事項
ISO 10218では、ロボット単体だけでなく、周辺設備や治具、搬送装置、安全柵、安全センサー、制御システムを含めたロボットシステム全体の安全を対象としています。
規 格では、次のような事項が定められています。
・リスクアセスメントの実施
・本質的安全設計
・インターロック
・非常停止
・安全停止機能
・安全柵
・安全センサー
・教示運転時の安全
・保守
・点検時の安全
・ロボットシステムの検証
また、近年普及している協働ロボット(コボット)については、ISO 10218を補完する技術仕様書であるISO/TS 15066と組み合わせて運用されます。ISO/TS 15066では、人とロボットが同一空間で作業する際の接触力や圧力、安全機能などについて詳しく規定されています。
◆つまりISO 10218(JIS B 8433)とは、
産業用ロボットとロボットシステム全体の安全設計・構築・運用に関する国際的な基本規格です。
■ISO 10218(JIS B 8433)の役割
ISO 10218の主な役割は、ロボットシステムの安全性を確保し、労働災害を防止することです。
主な役割は次のとおりです。
・安全要求事項の明確化
・リスクアセスメントの実施
・安全設計の指針
・安全機能の定義
・法令・規格への対応
・労働災害防止
・システムインテグレーションの標準化
・国際基準への適合
◆つまりISO 10218は、ロボットシステムの安全設計における基準となる規格です。
■なぜ重要なのか
ISO 10218に基づかずロボットシステムを構築すると、
・危険源を見落とす
・安全装置が不足する
・誤操作による事故が発生する
・法令や顧客要求に対応できない
といった問題が発生する可能性があります。
一方、ISO 10218に基づいて設計・運用することで、
・安全性を高められる
・事故を未然に防止できる
・国際基準に適合できる
・設備導入時の信頼性が向上する
・リスクアセスメントを体系的に実施できる
など、多くのメリットがあります。
◆そのためISO 10218は、産業用ロボットシステムを構築する際の基本規格となっています。
■基本的な考え方
ISO 10218では、一般的に次の流れで安全設計を行います。
1. リスクアセスメントを実施する
設備や作業の危険源を特定し、リスクを評価します。
2. リスクを低減する
ISO 12100の3ステップメソッドに従い、本質的安全設計、安全防護、使用上の情報提供を実施します。
3. 安全機能を構築する
非常停止、安全停止、安全PLC、インターロックなどを設計します。
4. 検証・妥当性確認を行う
安全機能が要求どおり動作することを確認します。
◆つまりISO 10218は、評価・設計・構築・検証を体系的に実施するための規格です。
■ISO/TS 15066との違い
混同されやすい規格としてISO/TS 15066があります。
△ISO 10218
産業用ロボットおよびロボットシステム全体の安全要求事項を定めています。
△ISO/TS 15066
協働ロボットによる人とロボットの協働作業に特化した安全要求事項や技術指針を定めています。
つまり、
・ISO 10218=産業用ロボット全般の安全規格
・ISO/TS 15066=協働ロボットの安全を補完する技術仕様
という違いがあります。
■ISO 12100との違い
もう一つ混同されやすいのがISO 12100です。
△ISO 10218
ロボットシステムに特化した安全要求事項を規定しています。
△ISO 12100
あらゆる機械に共通する機械安全の基本原則を規定しています。
つまり、
・ISO 10218=ロボット専用の安全規格
・ISO 12100=機械全般の安全設計の基本規格
という違いがあります。
■製造業での活用
ISO 10218は、次のような設備で活用されています。
1. 協働ロボット
ISO/TS 15066と組み合わせて安全設計を行います。
2. マシンテンディング
工作機械とのインターロックや安全柵を設計します。
3. パレタイジング
搬送設備や安全エリアを設計します。
4. 溶接・塗装ロボット
危険区域や保護設備を設計します。
5. 自動組立ライン
ロボット・コンベア・治具を含めたシステム全体の安全を構築します。
◆つまりISO 10218は、あらゆるロボットシステムの安全設計に適用されます。
■主なメリット
ISO 10218に基づいて設備を構築することで、一般的に次のようなメリットがあります。
1. 労働災害を防止できる
危険源を体系的に管理できま す。
2. 国際基準へ適合できる
海外展開や輸出にも対応しやすくなります。
3. 安全設計を標準化できる
設備ごとの品質を均一化できます。
4. 顧客からの信頼性が向上する
安全性を客観的に示せます。
5. リスク 低減を継続できる
設備更新時にも安全性を維持できます。
■注意点
一方で、ISO 10218を適用する際には注意点もあります。
1. 規格に適合するだけでは十分ではない
最も重要なのは、現場の実際の作業内容や運用方法まで含めてリスクアセスメントを実施することです。
同じ設備でも、作業方法やレイアウトが変われば必要な安全対策も変わります。
2. システム全体で安全を考える
ロボット単体だけでなく、周辺設備や制御システムも対象にします。
3. 安全機能を定期的に点検する
安全PLCや非常停止、安全センサーなどの機能確認を継続します。
4. 作業者教育を行う
安全規則や設備の運用方法を周知します。
5. 設備変更時 は再評価する
改造やレイアウト変更時にはリスクアセスメントをやり直します。
■実務で重要なポイント
ISO 10218を適切に運用するには、次の点が重要です。
1. リスクアセスメントを最優先する
最も重要なのは、設備導入前に危険源を洗い出し、ISO 12100に基づいてリスク低減を実施することです。
2. ISO/TS 15066と組み合わせる
協働ロボットでは両規格を併用します。
3. 安全PLCやインターロックを適切に設計する
要求されるPL(Performance Level)やSIL(Safety Integrity Level)に応じた安全制御を構築します。
4. 妥当性確認を実施する
設計どおりに安全機能が動作することを確認します。
5. 教育と保守を継続する
設備導入後も安全活動を継続します。
6. 文書化する
リスクアセスメント、安全設計、試験結果などを記録します。
■よくある適用例
ISO 10218は、次のようなロボットシステムで活用されています。
・協働ロボットシステム
・マシンテンディング設備
・パレタイジング設備
・溶接ロボットセル
・組立ライン
・搬送システム
・検査ロボット
・自動化生産ライン
◆このためISO 10218は、ロボットシステム全体の安全を設計・評価・運用するための中核となる規格です。
■自動化との相性
ISO 10218は、自動化設備との相性が非常に良く、協働ロボット、安全PLC、安全センサー、ライトカーテン、AIカメラ、MES、IoTなどと組み合わせることで、安全性と生産性を両立したスマートファクトリーを構築できます。
主なメリットは次のとおりです。
・安全設計を標準化できる
・労働災害を低減できる
・設備の信頼性を向上できる
・国際基準へ適合できる
・安全データを管理できる
・スマートファクトリー化を推進できる
■まとめ
ISO 10218(JIS B 8433)とは、産業用ロボットおよびロボットシステム全体の安全要求事項を定めた国際規格です。ロボット本体だけでなく、安全柵、インターロック、安全PLC、周辺設備を含めたシステム全体を対象としており、安全なロボットシステムの構築と労働災害の防止を目的としています。
実務では、ISO 12100に基づくリスクアセスメントを実施し、本質的安全設計、安全防護、使用上の情報提供の順でリスクを低減することが重要です。また、協働ロボットではISO/TS 15066と組み合わせて適用し、安全機能の検証や定期点検、作業者教育を継続することで、安全で信頼性の高い自動化設備を実現できます。






